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『キャッチ&リリースの真意とは』
ルアーフィッシングやフライフィッシングでは当り前の行為となった“キャ
ッチ&リリース”について考察してみました。
日本に、“キャッチ&リリース”というルアー&フライフィッシングには
スポーツのスピリットがあるんだ、ということを代弁するような言葉が入っ
てきてしばらく経ちますが、最近、ようやく一般に定着してきたかなぁあと
いう感じがします。私がルアーでブラックバスを狙い始めた頃は、よく父親
から「何で釣れたら、持って帰ってこないんだ!」と言われたことがありま
す(そういえば、日本のヘラブナ釣りでも“キャッチ&リリース”は、ごく
自然な行為ですね)。
中学生だった当時は、この“キャッチ&リリース”という概念に感動し、
魚を守り、釣り場を維持してゆくという行為に酔いしれていたところもあり
ました。100%何も疑わずにそれを実行してきました。しかし、この“キ
ャッチ&リリース”という行為の裏には、魚族の減少以上に悪い問題があっ
たのです。
それは“キャッチ&リリース”によって怪我を負った魚が、もとの水の中
に返されるということです。ブラックバスが生息している水域に限らず、ほ
とんどの水域には、病原菌などが存在します。人間でも山や川で遊んで怪我
をしてそのままほおっておくと、破傷風などの病気にかかってしまうように
、リリースされた魚の傷口がちゃんと塞がるとは誰も保証できないのです。
釣り人口の増加によって、“キャッチ&リリース”という行為がルアー&
フライに限らず、ごく当たり前のように定着してきた現代では、この問題は
もう少し真剣に論議するテーマだと思います。あまりにも安易に“キャッチ
&リリース”という行為が行われているように感じられるのです。
“キャッチ&リリースをすると?”
《魚が釣れた》
↓
《針を外す》
↓
《水にかえす》
↓
《傷口が悪化》
↓
《病気または死亡》
↓
《腐敗及び病原菌の繁殖》
↓
《水質悪化》
↓
《悪臭及び水辺植物の枯死》
もし、上記のようなことが繰り返されたとしたら、環境破壊どころか、ダ
イレクトに私たちの体調だって侵しかねません。腐敗物がたまってヘドロの
ようになると有害なガスの発生もありえることです。
針の刺さった傷口は、それほどひどくなければ、魚自身の体力及び抵抗力
で回復するはずなので、そのまま水に返しても問題はないと思われます。数
年前、マスコミを通じて、針を抜いた魚の傷口にマキロンなどの消毒液を吹
きかけてからリリースするということが流行しましたが、その行為が実際に
効果があるかどうかは別として、それくらい魚のダメージのことを考えたり
するという気持ちが大切で重要なことだと思います。
その魚の傷口を最小限のダメージに押さえるには、使用する針(フック)
のバーブ(アゴ)はないほうが当然、魚に与えるダメージは少ないです。し
たがって、最初から“キャッチ&リリース”をするつもりでポイントへ向か
うのならば、バーブレスフックの使用は当然のこととして受け入れられるは
ずです。もし、最初から釣った魚を、家で食べるからと、持ち帰るつもりで
いるのなら、バーブレスフックの使用はあまり考える必要もないかもしれま
せんが、1匹でもリリースするつもりでいるのならば、考慮する必要がある
と思います。
そういった意味でみると、先ほども話に出てきた日本の釣り文化に古くか
ら貢献してきた「ヘラブナ釣り」は、かなりハイレベルな“キャッチ&リリ
ース”を実践している釣りの分野ではないかと思います。この釣りでは、バ
ーブレスフックの使用のみならず、魚体に優しいタモ網(ルアー&フライで
いうランディングネット)の使用までも考慮されているのです。フックは、
100%バーブレスフックで、タモ網にしても網の目が小さく極力魚体を痛
めないような設計になっています。
バーブレスフックに関して言えば、バーブレスフックを使用することによ
って高まるバラシの確率を、いかにしてテクニックで防ぐか、ここにもヘラ
ブナ釣りの面白味があるようです。もちろん、ルアーやフライの世界でも、
最近はそういった傾向が現れてきていますが、まだまだごく一部のアングラ
ーに限られているようです。
水面まで引き上げたヘラブナは、水の中でタモ網に入れられ、タモ網の中
で水につけられたまま、人の手が触れることなく、針だけを持って、針が外
され、リリースされます(魚篭<ビク>に入れられることもありますが、そ
れでも人間の手が触れることは非常に少ないのです)。
こう考えるとブラックバスやシーバスのような魚でも、リリースする前提
があり、とくに記録的に大きいとか、写真に収めるなどといった理由がない
場合は、ヘラブナのように水中から持ち上げずに、フックだけを持って外し
てあげてリリースするという方向で考えるべきではないでしょうか。
また、人間の体温は魚にとっては高温なので、低温火傷することもありま
す。何年か前にとある釣り雑誌で、体側に人間の手の形の火傷の痕があるブ
ラックバスが紹介されていましたが、ハンドランディングも注意しなければ
せっかくリリースしてあげようと気持ちがあっても、無意識に魚体を痛めて
いるということもあるのです。
それでは、ランディングから、針の傷に話題を変えたいと思います。よく
餌釣りやワームでブラックバスを狙う場合には、針を魚に飲み込まれてしま
う、ということが起こります。これは早合わせをするとか、フックのサイズ
を上げるなど、その人のテクニックである程度はカバーできますが、100
%回避することは不可能です。
で、問題ですが、フックを飲み込んでしまった魚を、糸を切ったり、無理
に針を抜いて(というよりも引きちぎってという表現の方が正確かもしれま
せんが)リリースしてしまっている人を見かけます。これはもう閉口もので
すね。再生不可能な魚をリリースしているわけですから、見せかけだけの魚
族保存にほかなりません。魚体の腐敗によって水質を悪化させるばかりでな
く、前者の場合はそのフックやラインまでも水中に残るわけですから、併せ
て水質悪化、ひいては環境破壊を促進してしまっています。これを何千人、
何万人ものアングラーがやってしまったとしたら・・・。
環境破壊という観点からのみ見るのなら、この行為はたくさんの魚をキー
プして、自宅に持って帰るほうがまだマシだと言えます。
ワームフックを飲み込んだブラックバスから、ワームフックを強引に引き
ちぎってリリースしても、それは“キャッチ&リリース”ではなく、単なる
“キャッチ&キル”です。勘違いも甚だしいと言えます。
昨今は、ソルトウォーターでのルアーも盛んになってきていますが、海で
のキャッチ&リリースも定着してくると、淡水と同様の問題が起きないとは
限らないのです。海は広いから一匹や二匹なら、ということは絶対にあって
はならないことです。
たったひとつのタバコの吸殻をキチンと処分することから始まる環境保護
の世界、一匹の“キャッチ&リリース”もキチンと考える価値があるのでは
ないでしょうか?。環境破壊のスタートは、目にも見えない有害なガスの分
子がちゃんと処理できない、微生物が異常発生する、たった数センチの釣り
糸が分解しない、といったことからわかるように、非常にミクロな世界なの
です。それに比べれば、手にとれる大きさの魚について考えることぐらい、
義務教育を受けてきた人間ならできるはずです。
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